最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)912号 判決
上告人
鈴木りさ
外二名
代理人
鈴木匡
大場民男
清水幸雄
被上告人
古市一子
外三名
代理人
三宅厚三
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人鈴木匡、同大場民男、同清水幸雄の上告理由第一点について。
記録に徴すれば、被上告人らの建物買取請求に関する所論の防禦方法は、第一審の最終口頭弁論期日および原審の第一回口頭弁論期日に提出されたものであるところ、乙第一五号証および被上告人らが原審の第一回口頭弁論期日に陳述した昭和三九年一〇月二三日付準備書面の記載によれば、本件建物の所有権の帰属に関しては、訴外谷口と上告人らとの間に紛争があり、当時別件が係属中であつたことが窺われるのであつて、被上告人らの主張によれば、同人らは、本件各建物をいずれも右谷口から賃借したというのであるから、これらの事情を考え合わせれば、被上告人らが所論の抗弁をこの時機に提出したことは故意または重大な過失があつたものとは断じ難い。したがつて、右抗弁の提出を許容した原審の措置に所論の違法があるとはいえず、論旨は採用することができない。
同第二点について。
転貸借は、賃借人と転借人との間で前者の賃借物を後者に賃貸する旨の賃貸借契約をすることによつて成立し、必ずしも転貸の意思を必要とするものではないから、本件について転貸借関係を認めた原審の判断は相当であつて、論旨は採用することができない。
同第三点について。
所論の事実をもつてしても、被上告人らの本件建物買取請求権の行使を直ちに信義に反し、権利の濫用にあたるとは断じ難いのみならず、所論のような主張は、上告人らが原審において主張しなかつたところであるから、原審が右買取請求権の行使を所論のような理由で排斥しなかつたことになんらの違法もない。論旨は採用することができない。
同第四点について。
所論増改築の点については、原審において、なんら主張されておらず、したがつて、原審のなんら確定をしなかつた事柄であるから、これを前提として原審の判断を非難する所論は採用の限りでない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(松本正雄 下村三郎 関根小郷 天野武一)